Q.小早川一博 議員(公明)
高次脳機能障害は、病気や事故による脳損傷が原因で起こる認知障害全般を指し、これにより注意力や記憶力、言語能力、感情のコントロールに影響が出るため、多くの人が日常生活や仕事において困難を抱えています。
高次脳機能障害への理解が社会に浸透していないことや、家族が抱える介護負担が非常に大きいのが現状です。特に暴力を振るったり、どなったりといったような深刻な症状は、退院後に家庭や職場に戻ってから現れることが多く、病院ではその症状が見えにくいです。そのため、生活の場での様子を知ることがなければ、障害の理解は難しいです。
だからこそ、当事者や家族を支援するためには、医療と福祉の連携が非常に重要です。病院等での医療関係者向けの専門研修会と同じように、福祉の現場においても障害特性や日常的な支援方法について現場の職員向けの研修が重要です。
そこで、2点、福祉部長に伺います。
1点目は、当事者への専門的な相談支援や、医療と福祉の一体となったサポートの普及と定着に向けた取組についてです。前回の私の一般質問において、地域支援ネットワークの構築について取り上げた際、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムがあり、実効性のある支援体制を構築するとの答弁でした。その後、有効に機能し、医療と福祉の一体的な支援がなされているのか、具体的取組状況とその効果をどのように評価しているのか伺います。
2点目は、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定において、医療や多くの関係機関との連携を強化するための加算が拡充され、その一つとして、高次脳機能障害支援養成研修を修了した相談支援専門員を事業所に配置することによる加算が適用されるようになりました。
しかし、この高次脳機能障害支援養成研修は、各都道府県で実施することが定められているにもかかわらず、現在実施されていない状況です。福祉現場の体制整備を進めるためには、この研修を実施するべきと考えますが、福祉部長の見解を伺います。
A.細野正 福祉部長
まず、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」を活用した支援体制による具体的取組状況とその効果への評価についてです。
県では、本年2月、医師や障害者団体、市町村等で構成する埼玉県高次脳機能障害支援体制整備推進委員会において、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」を活用して支援を推進していくことを明確化しました。
「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」は、市町村単位及び保健所単位で、医療や福祉などの関係機関によるネットワークを構築し、重層的に支援を行う体制です。
また、県総合リハビリテーションセンターに設置した高次脳機能障害者支援センターは、県全域を対象に相談支援を行うとともに、このネットワークをバックアップする役割も担っています。
こうした支援体制を踏まえ、今年度の市町村や福祉関係者向け研修会では、特に高次脳機能障害を取り上げ、市町村のネットワーク活用を働きかけました。
また、市町村で対応困難な案件は、保健所や高次脳機能障害者支援センターの職員がケースカンファレンスに参加し、専門的立場から支援しています。
このような取組により、障害特性や支援に関する理解が深まり、市町村のネットワーク活用が進み、県と市町村や関係機関との連携をより深める効果があったと考えています。
県としては、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」を活用した高次脳機能障害者への支援体制の強化が進んできていると評価しております。
次に、高次脳機能障害 支援養成研修の実施についてでございます。
この研修は、高次脳機能障害の特性に対応できる専門性を持つ障害福祉サービス事業所等の職員の養成を目的に、今年度、新設されました。
研修は、講義形式に加え、障害特性の評価や支援方法などを演習形式で行う内容で、県が実施主体とされています。
研修の履修によって、高次脳機能障害者への支援の充実につながるとともに、事業所のサービス報酬加算の対象となり、早期の実施が望ましいと考えています。
一方、国は本年7月に、この研修の指導者養成を開始したところです。本県からは総合リハビリテーションセンター職員など計4名が参加しました。
こうした状況を踏まえ、開催時期や開催方法を関係者と調整し、年度内の研修実施に向けて鋭意準備を進めてまいります。
上記質問・答弁は速報版です。
上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。