Q.橋詰昌児 議員(公明)
社会や経済のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、担い手となるための能力を身に付ける人材育成、リスキリングが喫緊の課題と言われています。
言うまでもなく、DXはデジタル技術を用いた単純な標準化や効率化ではなく、社会の根本的な変化に対して既成概念の破壊を伴いながら新たな価値を創出するための改革であり、その影響力は業界全体に及ぶこともあります。実際、アメリカではアマゾンに代表されるインターネット物販サービスの台頭で大手の小売事業者が経営破綻したり、ネットフリックスなどの動画配信サービスの登場でレンタルDVDチェーンが倒産に追い込まれたりしています。タクシー配車サービスや民泊仲介サービスなど、デジタル技術を使って既存の業界に破壊的な打撃を与える新たなビジネスも出現しています。
それでも、総務省が2021年に実施した調査によると、日本では約6割の企業がDXを「実施していない」、今後も「予定なし」と回答しています。取組が進まない理由として、同調査で企業の53.1%がDX推進の課題に挙げたデジタル人材の不足が大きいと指摘されています。
DXを企業に定着させるには、一部のデジタル人材だけでなく、複数部門の社員がデジタル技術を習得する必要がありますが、あるコンサルティング会社が2021年に世界20か国を対象に実施した調査では、日本で職場に導入される新しいテクノロジーに順応できる自信があると答えた人は42%で、世界平均の80%を大きく下回っています。さらに、日本で絶えず新しいスキルを学んでいると回答した人は40%、雇用主から職務外でデジタルスキルを学べる機会が与えられていると答えたのは54%で、いずれも20か国中、最低だったそうです。
さらに、リスキリングには従業員の雇用を守る役割もあると言われています。DXの導入に伴い、不要となった業務に携わっていた人たちがデジタルに関する知識や技術を習得しなければ、大量の失業者が発生するおそれがあるためです。
他国に比べてリスキリングの取組が遅れていた日本でも、政府のデジタル田園都市国家構想で2026年度までにデジタル人材を230万人育成する方針を掲げました。デジタル分野の公共職業訓練の充実や企業のデジタル人材開発に対する助成金を増やすことなどが検討されています。さらに、国の総合経済対策に個人へ5年間で1兆円の投資など、リスキリング支援が盛り込まれました。
そこで、このリスキリングについて本県の現状と今後の取組について、産業労働部長に伺います。
A.板東博之 産業労働部長
人口減少社会の到来や原材料価格の高騰など、経営環境が大きく変化する中で、企業がその変化に適切に対応していくためには、DXを進め生産性や競争力を高めることが重要です。
経営者は、DXの重要性を理解し推進しなければなりませんし、また働く方もDXに適応するためのスキルアップを図らなければなりません。
しかし現状は、県内中小企業への四半期経営動向調査において、DXの課題として「何をどう進めていいか分からない」と回答した企業が35.1%、「DXを担う人材がいない」が34.3%でありました。
このため県では、「DX推進支援ネットワーク」を立ち上げ、経営層に対し、デジタル人材の育成など経営課題の解決に向けたDXの活用を働き掛けるとともに、働く方に対してはDX推進講座を用意し、リスキリングを支援しております。
この講座は、働く方のレベルに合わせ、デジタル技術を無理なく体系的に習得できるよう、基礎と応用をパッケージ化しつつ、企業ニーズを踏まえた「受発注・在庫管理の電子化」など48の講座をオンライン形式で開講しております。
また、県の高等技術専門校ではAI・IoTなどデジタル分野を中心に在職者向け訓練を実施するほか、企業の要望に応じたオーダーメイド型訓練により、企業の現場におけるリスキリングを支援しております。
今後さらに、社会情勢の変化やデジタル技術の進展に伴い、企業で必要とされるDXの内容やスキルも変わっていくことが想定されます。
常にその動向を見極めながら企業のDXを促進し、職業訓練におけるデジタル分野の比率を高めつつ、働く方のリスキリングを支援してまいります。
上記質問・答弁は速報版です。
上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。