Q.塩野正行 議員(公明)
福祉避難所については、指定の拡充や避難しやすい体制づくりなど、かねて取り組んできたところであります。そのきっかけは、東日本大震災の後、宮城県に赴いた際、障害者支援団体の方々と懇談する機会があり、「障害者にとって避難所は避難できる場所ではなかった」との話に衝撃を受けたからであります。福祉避難所に避難したいと思っても、一般の避難所経由でなければ行くことができない。周囲の方に迷惑をかけるからと、余震が続く中、危険を承知で自宅にとどまらざるを得なかった現実を垣間見ました。
あれから間もなく11年になります。当時、埼玉県内で福祉避難所を指定していたのは36市町に過ぎず、障害者のための福祉避難所は43か所しかありませんでした。現在は63市町村全てで福祉避難所が指定され、障害者のための福祉避難所は602か所に拡充されました。ただ、市町村ごとに見ると数のばらつきがあるため、更なる拡充が不可欠であります。
一方、国は昨年5月、令和元年台風第19号をきっかけに福祉避難所の在り方を見直し、福祉避難所の確保・運営ガイドラインを改めました。事前に受入対象者を決めておくことで、福祉避難所への直接避難を促進する方向にようやくかじを切りました。
しかし、受け入れるに当たり要配慮者一人ひとりの個別避難計画の作成を通じて、受入対象者の調整などを行うことになっています。そのため、福祉避難所への直接避難ができる体制は遅々として進んでおりません。県も、福祉避難所の指定拡充や避難訓練などを通じた運営面での強化を図っておりますが、直接避難を実現する道のりはまだ遠いのが現実です。
そこで、福祉部長に伺います。
福祉避難所は、高齢者施設や障害者施設が指定されていることが多いと思います。福祉避難所への直接避難の体制はどの程度進んでいるのか、お答えください。
また、直接避難の体制を整えるため、来年度モデル事業を実施するようですが、当事者の方々の御意見を伺うことで、より現実的な体制の構築に結び付くのではないかと思います。障害者団体や高齢者施設を運営する団体などと連携し、検討を進めていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
危機管理防災部長にも伺います。
首都直下地震など大規模災害への備えに万全を期すことが急務であります。避難所の運営は市町村の役割ではありますが、なかなか指定が進まないなど福祉避難所をできることなら県にも設置していただきたいという思いであります。令和元年の台風第19号により被災した障害者施設の入所者や職員がまとまって集団で避難できる避難場所を見つけられずに、大変な御苦労をされました。そうした事例が本県であったばかりであります。
県は昨年度、ホテル、旅館を災害時に避難所として利用するため、埼玉県ホテル旅館生活衛生同業組合と災害時応援協定を締結したと聞いております。この協定は、福祉避難所を確保する目的でも活用すべきと考えます。あわせて、県有施設についても御検討いただきたい。危機管理防災部長の答弁を求めます。
A.山崎達也 福祉部長
まず、「福祉避難所への直接避難の体制はどの程度進んでいるのか」についてでございます。
議員お話しのとおり、国は令和3年5月にガイドラインを改正し、高齢者や障害者など特に配慮を要する方について、福祉避難所への直接避難を促進することといたしました。
市町村が直接避難を実施するためには、先ずもって、水害や土砂災害など想定される被害に応じた避難先の特定や避難の方法、関係機関の役割分担など、直接避難に必要な事項を定めておくことが重要です。
しかしながら、国のガイドラインが改正されて間もないことや、先進事例がないことから、市町村では手探りで検討を進めており、現時点では直接避難の体制は進んでいないのが実情でございます。
こうしたことから、市町村の直接避難の体制整備の取組が進むよう支援していくことが、県の役割であると考えます。
そこで、令和4年度から、「災害時要配慮者避難体制整備サポート事業」を実施したいと考えております。
この事業では、まず、都市部や山間部などの地域性、人口規模や災害の特性を考慮して県内4箇所のモデル市町村を選定します。
モデル市町村では、関係機関による検討会議を立ち上げ、県から派遣する防災アドバイザーなどの有識者の支援を受けて、地域の実情に応じ、直接避難の実施に必要な事項を定めます。
こうしたモデル市町村の取組の成果については、報告書や動画マニュアルを作成し、他市町村に情報提供することにより、県内全域に、直接避難の体制整備につなげてまいります。
次に、「モデル事業では障がい者団体や高齢者施設を運営する団体などと連携し検討を進めていくのか」についてでございます。
議員お話しのとおり、モデル事業の実施に際しては、障害者団体や社会福祉施設を運営する団体などから丁寧に御意見をお伺いすることが不可欠であると考えております。
当事者の方々の御意見をしっかり反映させることで、効果的な事業展開を図り、モデル事業を成果が上がるものにしたいと考えております。
災害時に要配慮者が安心・安全に福祉避難所へ直接避難できるよう、市町村をしっかり支援してまいります。
A.安藤 宏 危機管理防災部長
「災害時応援協定を活用した福祉避難所の確保」についてでございます。
要介護高齢者や障害者など要配慮者にとって、災害時の避難生活は大変な困難を伴うものと認識しております。
福祉避難所には、あらかじめ確保してある指定福祉避難所のほか、発災後に協定等により福祉避難所として活用するものがございます。
お尋ねのホテル・旅館につきましては、県地域防災計画の中で、実質的に福祉避難所として活用するよう努めることとしております。
また、国の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」では、ホテル・旅館等の宿泊施設を指定福祉避難所として利用可能な施設と位置づけております。
令和2年7月豪雨のあった熊本県では、あらかじめ締結していた協定に基づき、9つのホテル・旅館を福祉避難所として活用し、84人の要支援者が避難した事例がございました。
今後、埼玉県ホテル旅館生活衛生同業組合との協定を市町村防災担当課長会議等で改めて周知をし、災害が発生した際には、市町村が福祉避難所として活用できるよう、関係部局とともに働き掛けてまいります。
次に、「県有施設を福祉避難所として活用することについて」でございます。
現在、県有施設のうち、市町村の意向などを踏まえ、特別支援学校や障害者支援施設など27の施設が福祉避難所として確保されております。
福祉避難所には、施設自体の安全性や施設内のバリアフリー化、避難生活に必要な空間の確保などが求められるものと考えます。
既に確保された27施設のほかに、活用可能な県有施設があるか、関係部局とともに検討してまいります。
上記質問・答弁は速報版です。
上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。