Q.西山淳次 議員(公明)
ベーシック・サービス論とは、教育、医療、介護など、人間が生きていく上で不可欠なサービスを無償で提供する考え方で、慶應義塾大学の井手英策教授が提唱しております。公明党は、高齢者人口がピークを迎える2040年を目指し、このベーシック・サービスの考え方を取り入れ、教育、医療、介護などの自己負担をなくすことを目指すと、昨年の党大会で明らかにしています。
なぜ、今ベーシック・サービスなのでしょうか。
我が国は、人口減少と成熟経済の時代に入り、成長を求めて、もがき続ける日々が続いております。確たる方向性を見失った日本。今、問われているのは、私たち自身が目指すべき社会像とそのための経済の在り方です。私は、その答えになり得るのがベーシック・サービス論であると考えています。
ベーシック・サービスは、生きていくために必要なサービスを無償化することにより、誰一人置き去りにしない社会を目指します。当然、その財源は大きなものになりますが、税を通じて皆で痛みを分かち合う、支え合う社会を目指すものです。
井手教授の試算によると、ベーシック・サービスとして、現在の教育、介護、医療の自己負担分を全て無償化して、その財源を全て消費税で賄おうとすると、6%の増税が必要とのことです。大変な増税と思われますが、現在、税込み110円で買っているパンを116円で買うことで教育や社会保障が無償化され、誰もが安心してサービスを受けられるとしたらどうでしょうか。もちろん、現実的には消費税だけでなく、他の税とも組み合わせて財源が構成されることになるでしょう。
強調したいのは、ベーシック・サービスは、社会保障など基本的サービスを全員が無償で安心して受けるために皆が負担を分かち合うという考え方であり、あるべき社会像を目指すための経済政策であるという点です。
そこで、伺います。このベーシック・サービス論について、知事はどうお考えになりますか。あわせて、知事が進めようとする経済政策は、どのような社会を目指してのものなのかについてもお聞かせください。
A.大野元裕 知事
この理論は、全ての人が生活の基礎的な部分に不安を持たずに生きていけるようにする考えと理解をしており、この基になる「『弱者を助ける』ではなく『弱者を生まない』」という考え方ですが、ベーシック・インカム論等と比較し、いかなる具体的な施策が示されていくことになるのか大変興味を持っています。
私は、あらゆる人に居場所があり、活躍でき、安心して暮らせる社会である「日本一暮らしやすい埼玉」の実現を目指しております。
これはSDGsの理念である「誰一人取り残さない」ともつながるものであり、ベーシック・サービス論の考えとも根底では相通じるものがあるのではないかと共感しております。
他方、このような施策を実施するためには、当然のことながら財源の確保が大きな課題となります。
議員お話しの慶應義塾大学の井出教授の試算によれば、ベーシック・サービスの実現のための財源を全て消費税で賄うとしたら、6パーセントの増税に相当する、約17兆円という多額の財源が必要となります。
また、ベーシック・サービスとして医療や介護、教育、障害者福祉などが挙げられていますが、具体的にどのようなサービスにするかなど、その範囲や水準もまだ明確にはされていないと認識をしております。
ベーシック・サービスの導入は、国の在り方など国民生活に直接大きな影響が及ぶものであることから、国民全体で議論をし、コンセンサスを得るべき課題であると考えているところであります。
次に、知事が進めようとする経済政策はどのような社会を目指してのものなのかについてであります。
私は知事就任以来、企業利益の増加が個人所得の向上につながる「成長と分配の好循環」の実現を目指してまいりました。
例えば、デジタル技術などを活用した新たな産業の育成や企業の生産性の向上、人材の育成などを進め、経済の持続的成長を図っているところであります。
デジタルの恩恵は企業だけにとどまるものではなく、県民生活の様々な分野における利便性の向上につながります。
DXのXの部分、すなわちデジタルによる変革を進めることにより、介護・医療・保育から地域交通まで幅広く県民生活を豊かにすることが可能となります。
こうした取組により恩恵をあまねく県民に還元することにより「日本一暮らしやすい埼玉」を目指しており、これが私が目指す経済のベースであります。
※上記質問・答弁は速報版です。
※上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
※氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。