逼迫している医療現場の負担軽減について

Q.萩原一寿 議員(公明)

新型コロナウイルスオミクロンの派生型BA・5が猛威を振るい、8月5日には本県で1日として最高の1万3,991人の感染者数を記録、医療現場が逼迫する状況になりました。発熱外来に電話してもつながらないとの声が幾つも寄せられました。
医療が逼迫すれば、本来助かる命が助からなくなる可能性が高まります。9月1日に医療現場の最前線で奮闘されている医師からお話を伺い、医療逼迫の要因となる課題など改善すべき点をお聞きしました。
医療現場に従事されている方は、日々感染するリスクにさらされながら患者と向き合っています。お話を伺い、感謝の思いでいっぱいになりました。日々の業務で最も負担を感じておられたのがHER-SYSの入力です。
HER-SYSとは、新型コロナの患者情報を電子的に入力、一元的に管理し、医療機関、保健所、都道府県の関係者間で共有するシステムのことです。この業務は医師が行うことになっており、伺ったクリニックでも全ての診察が終わってから、その作業に入っているそうです。入力し、内容をプリントアウトして確認後、全てが終了するのは夜9時台から、遅いと10時過ぎ、それから帰宅だそうです。
今年に入り、HER-SYSへの入力数は増えたそうです。昨年まではそれほどの数ではなかったとの話がありました。それこそがオミクロン株による第六波、第七波の厳しい状況を物語っていると言えます。
具体的に改善すべき点を申し上げます。
まず、HER-SYSの入力項目がどれだけあるのか御存じでしょうか、数えたら85項目ありました。そこには、入力の必要のないと思われる項目が多過ぎるとの話です。
例えば、ワクチンの接種歴という項目は、患者自身が感染後に保健所に報告するMy HER-SYSで行えば必要ない。重症化のリスク因子となる疾患等の有無も、My HER-SYSを通じて患者からの情報収集で十分共有できるとの話です。また、診断方法がPCRか抗原であったかの入力は任意項目になっていますが、入力を省略すると後からの発生届のレビューの際にエラーが出てしまい、実際は入力せざるを得ない状況になっています。軽症者については、住所、氏名、携帯番号、診断日、検体採取日、発病日まで入力すれば、患者の発生把握には十分であるとの御意見をいただきました。
そして、私は医師です。人の命を救うことが第一であり、そのためであれば夜遅くともいといません。しかし、HER-SYSは入力する項目が多く、改善すべきと思いますと申されていました。
さらに、御指摘いただいたのは、入力画面の文字が薄くて見にくく、作業に時間がかかってしまうという点です。これは2年以上前にHER-SYSが導入されて以降、全く変わっていないそうです。
そこで、大野知事に3点質問します。
1点目として、県は9月26日に全数把握を見直し、発生届の対象を重症化リスクの高い患者に絞っています。それにより医療現場の負担が軽減されるかどうかは未知数です。県は、この負担軽減がどのように進むとお考えか伺います。また、私が述べた医療現場の状況を踏まえ、HER-SYSの改善についてどのように国に要望していくのか、お尋ねします。
2点目として、今回の全数把握の見直しによって重症化リスクの低い方が重症化した場合に、その命を守ることができるのか疑問です。これには万全のサポート体制を取るべきです。県の御見解を伺います。
3点目は、ワクチン接種についてです。本来、診察すべき患者をしっかり診ていくことを考えたら、公的機関によるワクチンの集団接種を多くすべきとの話がありました。政府はオミクロン株に対応するワクチン接種を9月20日から開始すると発表しました。これについても、本県としてどのように取り組むお考えか伺います。あわせて、今後県が行っている集団接種会場の取組をどのように進めていくのかお尋ねします。
さらに、例年10月頃からインフルエンザワクチンの接種が始まります。新型コロナとインフルエンザ両方のワクチン接種を同時に行うようになります。これについても医療現場に過度の負担がかからないように、県が医療機関の声を聞いて対応すべきです。知事のお考えをお聞かせください。

A.大野元裕 知事

次に、全数把握見直し実施後の医療現場の負担軽減についてであります。
国は療養の考え方を転換し、9月26日から全国一律で全数届出を見直し、本県でも開始されました。
医療機関が作成する発生届は65歳以上の方や入院を必要とする方などの4類型に限定をされたところであります。
発生届の作成数は全数届出の見直し前と比べおおむね2割程度になるのではないかと推定をしています
発生届の届出項目については、「氏名」「電話番号」や「診断年月日」等に限定されており、既に簡略化が進んできたところから、県医師会によれば簡略化の効果と比較して全数見直しによる負担軽減効果は限定的とのことであります。
他方、医療機関では新たに年代別の陽性者数を毎日HER-SYSで報告するとともに、発生届対象外の方に体調変化のときの連絡窓口などについて説明をすることとなります。
医療現場では発生届の作成事務が減少しても、制度の切替え時には説明など負担が増える可能性もあると考えております。
次に、HER-SYSの改善についてであります。
HER-SYSは新型コロナウイルス感染者の情報を一元管理することにより、関係機関の情報共有を促進し、効果的な対策を立てることに役立ちます。
議員が85項目と指摘をされた入力項目は、届出事項としては現在6項目に大幅に減少しておりますが、画面を見やすくすることの御指摘もございました。
こういったことも含め誰もが利用しやすい仕様にするなど、引き続き、医療現場の声を踏まえ、必要な改善を国に要望したいと思います。
次に、重症化リスクの低い方が重症化した場合の対応についてでございます。
県では、発生届対象外の方を支援するために、陽性者登録窓口を新たに設置をいたしました。
発生届対象外とされた陽性者には、感染症法第44条の3第2項に基づき、陽性者登録窓口への登録及びMy HER-SYSによる健康状態の報告を求めております。
登録された方の体調が悪化した場合には、看護師が駐在する陽性者相談窓口にご連絡をいただきます。
相談を受けた看護師は陽性者の状態等を確認し、医療機関の受診が必要と判断した場合には、派遣医師による診療や外来での受診を調整いたします。
入院を要する場合には速やかに保健所に連絡をし、入院調整を行うこととといたします。
一方、登録をされない方については、医療機関受診時やホームページ等で陽性者相談窓口をお知らせし、登録された方と同様の対応を行います。
発生届の有無にかかわらず重症化した場合にも丁寧な対応が行える体制を構築し、安心して療養いただけるよう取り組んでまいりますが、届出外の方にも是非マイハーシスで登録をいただきたいと考えております。
次に、オミクロン株対応ワクチン接種への本県の取組についてでございます。
議員お話しのとおり、9月20日から、オミクロン株対応ワクチンの接種が開始をされました。
対象者は、初回接種を完了した12歳以上の全ての方々であり、本県では、約590万人が対象となります。
国では、オミクロン株対応ワクチンの接種を早期に希望する方の接種を年内に終了することを目標としています。
ワクチン接種の実施主体である市町村は、地元の医師会等と話し合い、医療機関で実施する個別接種、市町村が臨時の接種会場を設置する集団接種等を組み合わせ、地域の実情に最も適した接種体制を構築しています。
県といたしましては、全ての市町村において、希望する方が接種できる体制を構築するため、ハイペースで多くの方に接種を行う医療機関に個別接種協力金を支援するなどの支援をはじめ、可能な限り早期の接種を励行する広報に努めてまいります。
次に、今後の県の集団接種会場の取組についてでございます。
県では、現在、市町村の接種体制を補完するために、3か所の集団接種会場を設置しております。
9月30日から県接種センターでもオミクロン株対応ワクチンの接種を開始いたします。
また、10月からは、開設日を週3日から週4日へと増やすことにいたしました。
さらに、11月からは1か所増やし、計4か所体制で運営することを検討するなど、県としても接種体制の充実を図り、市町村の支援を行ってまいります。
次に、インフルエンザワクチンとの接種時期が重なるので、医療現場に負担が掛からないように対応すべきについてでございます。
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの接種時期が重なることになることから、地域の医療機関の役割は極めて大きくなるとともに、その負担も増大するものと認識をしています。
接種を行う医療機関からは、インフルエンザワクチンの接種と時期が重なることについて、異なるワクチンの適切な管理や間違い接種の恐れなどを懸念する声もいただいております。
県といたしましては、県の接種センターの積極的な利用の呼び掛けやワクチンバスによる地域に出向いての接種の実施に加えて、今後、可能となる職域接種の対象事務所への働き掛けなどを通じ、地域への医療機関の負担軽減に努めてまいります。
また、医療現場に過度の負担がかかることを防ぐために、現場で接種を行う医療機関の声に耳を傾けることは非常に重要だと思います。
引き続き、医療機関の声をよく把握し、市町村とも共有するなど強固に連携し、接種体制の構築に努め、ワクチン接種を強力に進めてまいります。

上記質問・答弁は速報版です。
上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。

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