Q.西山淳次議員(公明)
昨年11月、埼玉県医師会主催で本県も共催をした「超高齢社会の医療を考える」という大変意欲的なシンポジウムが大宮で開かれました。私も参加し、大いに刺激を受けました。特に終末期医療、厚生労働省は人生の最終段階における医療と呼び始めているそうですが、このテーマは今後の本県医療行政でも重要課題になると私は考え、今年1月、先進的な取組をしている広島県に視察に行ってまいりました。広島県では、県医師会が中心になり、県、広島市、広島大学と連携し、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という活動を進めています。アドバンス・ケア・プランニングは、自分が元気なうちに将来の医療に関する自分の考えをまとめておくことです。
具体的に行われているのは、「私の心づもり」というA4の表裏の1枚の紙に、今の自分の希望や思いを整理し、残しておく活動です。質問に答えていくことで、その人の人生観や価値観を整理しつつ、人生の最終章をどこで迎えたいか、自宅か病院か、あるいはどんな治療を受けたいのか、延命治療を希望するか、代わりに意思決定をしてくれる人がいるかなど、私たちがふだん余り考えることのない、しかしいざという時に大変迷うような問題が整理をされる構成になっています。広島県では、既に6万枚を印刷配布したとのことであります。
また、印象的だったのは、医療現場で性急にこのペーパーを使おうとするのではなく、優先されているのは医師や県民への普及啓発活動だったことです。確かに、一旦紙に書いておいても、時がたてば考えが変わることもあり得ます。もちろん、変わって構わないわけです。また、その考えは本人だけでなく、家族と共有されているか、これも微妙な問題です。
「私の心づもり」は、遺言書のように法的な拘束力を持つものではありません。紙に書くという作業を通して、自分の考え方を整理し、方向付けていくきっかけにし、将来に備えていく、これがアドバンス・ケア・プランニングであり、この考え方を地域の文化にすることを目的にしていると聞き、私は「なるほど」と納得をした次第でございます。
さて、質問です。本県の新年度予算案にも、人生の最終段階における医療の在り方についての啓発DVDを作成することが盛り込まれました。誠に時宜を得た取組と思います。その上で、今後の取組のポイントとしては、まず医師会としっかり連携をしていくこと、これが第1のポイントです。そして、今後の方向性としてですが、広島県の「私の心づもり」のように一人ひとりが紙に書いて残すアドバンス・ケア・プランニングのような取組を参考にすることも重要と考えます。この2点について知事の御所見を伺います。
A.上田清司 知事
患者と家族を支える医療・介護の関係者の中心となるのはかかりつけ医でございます。
かかりつけ医は医療知識や技術を持つだけではなく、病院の専門医とは異なり、個々の患者の生き方や希望まで幅広く理解する役割が期待されております。
人生の最終段階の医療に対応可能なかかりつけ医を広く確保するためには、地域の医療を担う医師会との連携が重要です。
議員も御参加いただいた昨年11月のシンポジウムは、県と県医師会、日本医師会との共催による全国的にも例のない取組でございました。
人生の最終段階における医療を医師会が真正面から取り上げた画期的なシンポジウムだったというふうに思います。
一方、人生の最終段階における医療は、患者本人の意思を尊重することが基本です。
患者がこれから受ける医療やケアについて、家族や医療・介護関係者と繰り返し話し合い、その時々の方針を決めておく「アドバンス・ケア・プランニング」という考え方はとても重要でございます。
このためには、日頃から本人と家族が話し合い、家族が本人の思いを理解し、尊重することが不可欠です。そこで、県では平成30年度に県医師会と協力して、人生の最終段階における医療や介護現場の様子を撮影した動画を作成し、県民の理解を深めてまいりたいと考えております。
市町村にこの動画を配布し、住民向けの講演会や地域包括支援センターなどで活用していただくなど、本人が家族と話し合う機運を醸成してまいります。
今後とも市町村や医師会としっかり連携し、人生の最終段階に、本人の意思を尊重した医療やケアが実現する環境を整えてまいります。
上記質問・答弁は速報版です。
上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。