Q.蒲生徳明 議員(公明)
2023年の平均消費者物価は3.1パーセント上昇しました。物価上昇の要因は、エネルギー価格、そして円安に伴う輸入価格の高騰にあるとされ、コストプッシュ型のインフレとの指摘があります。コストプッシュ型のインフレは、需要の増加を伴うデマンドプル型のインフレと異なり、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化につながる危険があります。やはり物価高に負けない賃上げの実現なしに、生活者の家計の実感は苦しいままです。
賃上げの前提は、言うまでもなく、企業の生産性の向上に加え、各種コストの上昇分が適切に商品やサービスの提供価格に転嫁されることです。県内中小企業の状況は、県が昨年9月に実施した四半期経営動向調査によると、コストの高騰に対し「6割以上転嫁できている」とする企業の割合が45.1パーセントである一方、「全くできていない」と回答した企業の割合は17.4パーセントありました。
現在、政府は発注側、下請側の双方に、努力すべき取組や行動の指針を規定する振興基準の改定を目指していて、価格の高騰に伴うコストの上昇分については、取引価格へ全額転嫁することを目指す方針との報道もあります。県もこの動きに適切に呼応すべきであります。
本県は、これまで円滑な価格転嫁に向けた環境整備のためにパートナーシップ構築宣言の登録を促進し、金融機関と連携した価格転嫁サポーター制度の創設、価格転嫁相談窓口の設置や価格交渉支援ツール等の無料公開など様々な取組を行い、県と産官金労が協働するこれらの取組は、外部団体の政策評価で優秀賞を受賞しています。
さて、先ほどの四半期経営動向調査によれば、パートナーシップ構築宣言の登録について、「既に登録をしている」6.1パーセント、「今後登録をする予定」4.9パーセント、「登録しようか検討している」23.3パーセントを合わせた回答割合は34.4パーセントでした。これまでの取組の方向性は高く評価しますが、今後はそれぞれの中小零細企業が価格転嫁と賃上げの好循環を実感できるよう、更に前進させていく必要があります。
そこで、これまでの取組の実績の評価と、今後、持続的な賃上げを実現するために取組をどう強化していくのかについて、知事に伺います。
A.大野元裕 知事
私は、県内中小企業の持続的な賃上げ実現には、生産性の向上とともに、適切な価格転嫁を促進し、企業の稼げる力を高めることが重要と考えます。
このため、令和4年9月に産・官・金・労の12者により「価格転嫁の円滑化に関する協定」を全国に先駆けて締結し、オール埼玉で中小企業の価格転嫁を支援しています。
協定に基づき、通知や電話、訪問により県内企業にパートナーシップ構築宣言の登録を直接働き掛けるとともに、価格交渉のノウハウ獲得に向けた専門家による伴走型の支援を実施しています。
また、原材料1,420品目のこれまでの値動きを示す「価格交渉支援ツール」や、価格転嫁と収益の相関関係が企業ごとに一目で分かる「収支計画シミュレーター」を開発し、県ホームページで無料公開しています。
さらに、昨年9月には、金融機関との連携による「価格転嫁サポーター制度」を創設し、既に、16金融機関、約4,000人に上るサポーターの方に活躍していただいており、企業訪問の際に県の最新の支援情報の紹介や、ツールの効果的な使い方などの支援を通じ、適切な価格転嫁を後押していただいております。
企業からは、「価格交渉支援ツールを活用して値上げの根拠資料を作成したところ、取引先との交渉に成功した」、「価格転嫁サポーターから活用できる支援情報を知ることができた」など感謝の声を伺っています。
こうした施策の展開により、パートナーシップ構築宣言を行った企業の割合は大都市圏でトップとなり、2位との差も拡大をしているところです。
しかしながら、県の企業のサプライチェーンは県内だけでは完結しておらず、これらの取組を全国に拡大していくことが必要です。
本県から始まった地域連携の動きは「埼玉モデル」として現在、33道県にまで拡大しており、国や日本商工会議所からも高く評価いただくなど、先駆的な取組ではあるものの、これを更に広げなければなりません。
価格転嫁についてはこれまでの商取引の慣行からくる構造的課題を抱えており、一朝一夕には解決できないことから、この取組の実効性を更に高め拡大する必要があると認識をしております。
次に、持続的賃上げを実現するために、どう取組を強化するのかについてであります。
今月2日に開催した「強い経済の構築に向けた埼玉県戦略会議」では、経済の好循環を実現し、持続的な賃上げにつなげられるよう、価格転嫁の取組を引き続き実施すべきとの御意見を頂きました。
このため、協定を令和7年3月末まで延長し、労務費の適切な転嫁など、連携した取組を更に加速していくことといたしました。
県では、県内中小企業の価格交渉力を高めるため、価格交渉支援ツール等の機能充実や専門家による伴走型支援の拡充などを行ってまいります。
他方、令和5年9月の埼玉県四半期経営動向調査では、価格転嫁で企業が行政に期待する支援策として「業界全体での気運醸成」を望む企業が約4割と最も高くなっております。
自社だけでの価格交渉に不安がある中、業界全体の取組につなげていけるよう、協定締結団体と連携し、業種別セミナーの開催や、業界団体の会報誌を活用した広報などを積極的に実施してまいります。
引き続き、産・官・金・労が一体となって、県内中小企業が適切な価格転嫁を行い、賃上げにつなげていけるよう全力で取り組んでまいります。
上記質問・答弁は速報版です。
上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。