10 教育は県政の最重要課題(教育長)

(1)教員の働き方改革と人材確保

Q.西山淳次 議員(公明)

南アフリカのマンデラ元大統領は、教育の重要性について、「Education is the most powerful weapon which we can use to change the world」──「教育は、世界を変えるために使える最強の武器である」という言葉を残しています。私も常々、教育は県政の最重要課題と考えてきました。日々現場で奮闘しておられる埼玉県の先生方に心からの敬意を表しつつ、以下3点にわたって質問をいたします。
初めに、教員の働き方改革と人材確保について伺います。
長時間の超過勤務が慢性化して、希望と意欲に燃えていた教員が次第に元気を失い、心の病による休職が増加をしています。教員の志望者が減り続け、教員採用選考試験の倍率が年々低くなるとともに、現場では、教員の未配置、未補充が広がり、生徒たちが対面できちんと授業を受けられないケースも発生をしています。事態は大変に深刻です。
これまでの代表質問で、私は、教員の働き方改革について、超過勤務を月45時間以内、年間360時間以内に収めるという目標を令和4年度からの3年計画でどう達成していくのか、そのためには、教員の業務を支援するスクール・サポート・スタッフの拡大をはじめ、朝練の原則禁止など部活動指導の負担軽減、学校行事の大幅な見直しをするべきと提案をしました。
コロナ禍という特殊事情もあったわけですが、この1年間、どのように取り組み、成果はどうであったのか、今後の目標達成の見通しはどうかについて、まず、教育長にお尋ねをいたします。
また、教員採用選考試験の倍率低下が止まらないことも大変に心配です。今年度実施された本県の小学校の受験倍率は1.8倍、中学校は3.7倍と、平成以降では最低の数字を記録しています。より多くの学生志望者に埼玉県の教員採用選考試験を受けてもらえるような工夫が必要と考えます。
例えばですが、先ほども事例に挙げた保育士の借上宿舎制度のように新任教員に対する家賃補助を行うなど、埼玉県は教員を大事にしますよという具体的なメッセージを発信しなくては、埼玉県を選んでもらえません。教員採用選考試験の受験者を増やすための取組について、教育長に伺います。

A.高田直芳 教育長

まず、教員の働き方改革について、この1年間どのように取り組み、成果はどうであったのかについてでございます。
県では、令和4年4月に「学校における働き方改革基本方針」を改定し、目標の達成に向け、実効性があると考えられる様々な取組を推進してまいりました。
議員から御提案のあった、教員業務支援員いわゆるスクール・サポート・スタッフの拡充につきましても、昨年度から56校増やし、今年度は417校の小・中学校に配置いたしました。
また、昨年11月には各市町村に対し、小・中学校における部活動の朝練習原則中止や学校行事の見直しを含めた、教育活動の全般的な改善に係る通知を発出するとともに、全市町村の教育長に直接要請も行ってきたところです。
さらには、教員の超過勤務が多い市町村や学校に対しては、県教育局の職員が直接訪問し、教員の超過勤務の状況に関する具体的な数値を示し、主体的かつ早急に原因の分析と対応策を講じることについて働き掛けを行ってまいりました。
これらにより、令和4年11月時点で、超過勤務が月45時間を超えている教員の割合は、小学校では36.1%と昨年度より12ポイント、中学校では、50.8%と昨年度より8ポイント改善されています。
また、高校では29.4%と昨年度より6ポイント、特別支援学校では11.5%と、昨年度より4ポイント改善が図られています。
次に、今後の目標達成の見通しについてでございます。
教員の超過勤務の状況については、全校種で徐々に改善しているものの、目標を達成するためには、今後も更なる取組の加速が必要と考えております。
そのため、来年度は、小学校における教員の授業の持ち時間数の縮減に向け、理科や算数などの教科を担当する専科教員の拡充や、新たに専科非常勤講師を配置する準備を進めております。
また、小・中学校における教員業務支援員の更なる拡充や、コミュニティ・スクールを活用した保護者、地域住民の教育活動への参画を促進するなど、教員の負担軽減につながる取組を積極的に推進してまいります。
さらには、実際に超過勤務の縮減に効果のあった取組を、校種別に10項目にまとめ、市町村や学校に通知した「業務改善スタンダード」について、その活用事例を広く周知し、その積極的な活用をより一層促すなど、基本方針で定めた目標達成に向けて強い決意を持って取り組んでまいります。
次に、教員採用試験の受験者を増やすための取組についてでございます。
議員お話しのとおり、本県の教員採用選考試験の倍率が低下を続けていることにつきましては、大変大きな課題と受け止めています。
そのため、今年度は、「彩の国かがやき教師塾」として、小・中学校の教員希望者を対象に、これから進路を決めていく大学2年生からを対象に、実際に学校で子供たちと触れ合う体験を通して、教員の魅力を伝える取組も始めたところです。
また、令和5年度実施の試験では、新たな教員確保策として、「セカンドキャリア特別選考」を実施することといたしました。
これは、社会人が受験しやすいよう一般教養試験を免除したり、出産や子育てのため職を離れ一定期間経過した方でも出願したりできるようにしています。
加えて、教員免許取得のため、2年間の採用猶予期間を設けることにより、受験の時には教員免許がなくても、合格後に、免許を取得してから、実際に採用することも可能といたしました。
これらの取組は、教員を志望する様々な方々の置かれた状況に応じて、可能な限り配慮したものでもあり、埼玉県は教員志望者を大事にしているものとも言えるものではないかと考えます。
さらに、本県では、独自のライフステージに応じた研修や専門的な指導力を高める様々な研修を実施するなど、教員を大事に育てる取組を行っており、こうしたことを積極的に発信しながら、受験者の確保に努めてまいります。

(2)IT化に並行して読書活動と自然体験を

Q.西山淳次 議員(公明)

世は挙げて、デジタル化、ネット化、IT化の時代を迎えています。GIGAスクール構想により1人1台の端末整備が急速に進み、子供たちの多くが自分専用のスマホやパソコンを持つ時代になりました。時代が求める情報機器を使いこなす教育は必須でありますが、一方で私が心配するのは、これらの情報革命のツールがもたらす負の側面であります。
大人ですら、次々と刺激的な映像や動画を遍歴していると、バーチャルな世界のとりこになってしまい、現実の世界に挑む生命力が弱くなってしまいそうです。ましてや、社会経験の少ない無垢な子供たちに与える影響が懸念されます。
その予防ワクチンともいうべきものが、読書であると私は考えています。想像力を駆使し、作者との粘り強い心の対話を繰り返す読書は、ちまたにあふれるバーチャルリアリティー(仮想現実)のもたらす悪影響から魂を保護する防壁になり得るでしょう。その意味で、私は、IT教育を推進するのと並行して、読書教育あるいは読書活動でもよいのですが、読書を活発化することを怠ってはならないと訴えたいのです。
また、加えて言えば、自然体験の機会を増やしていただきたい。液晶画面で見る自然や生き物と実際のそれは、やはり違います。遠くへ行かなくても、近隣の田んぼや畑、雑木林でもよい、学校敷地内にある桜の木1本でも、見方によっては立派な大自然です。地域の実情に合わせて工夫し、生の自然に触れ合う機会を是非持ってほしいと私は願います。IT教育の推進と並行して読書活動と自然体験を重視することについて、教育長の御所見を伺います。

A.高田直芳 教育長

子供たちには、様々な分野においてデジタル化が急速に進展する社会でしっかりと活躍できる力を育んでいく必要があり、これからの時代には、ICTを積極的に活用した教育は必要不可欠なものと考えます。
こうした時代にあっても、議員お話しのとおり、情報機器を使うことによる負の側面の予防という観点だけではなく、コミュニケーションの核となる言葉の理解力や表現力とともに、思考力や想像力を育む読書は学校教育において極めて重要です。
また、想像力の育成にあたっては、知識を得るだけではなく、子供たちに地域の身近な自然に触れさせる体験を通して、豊かな情操を育むことはかけがえのないものと考えます。
これまでも、小中学校では、朝の読書活動や地域と連携した野菜や米を栽培する自然体験などの取組を推進しております。
県といたしましては、今後とも、読書活動や自然体験を積極的に推進するとともに、小中学校におけるこうした取組がより一層充実されるよう働き掛けてまいります。

(3)コミュニティ・スクールの質の充実を

Q.西山淳次 議員(公明)

コミュニティ・スクールとは、法令的には学校運営協議会を設置している学校のことをいいますが、私流に解釈しますと、地域に学校を開き、地域住民や保護者とともに子供を育て、学校をつくっていく仕組みであります。
我が党は、コミュニティ・スクールを学校の更なる可能性を開く重要な取組と位置付け、推進してまいりましたが、教育局の積極的な取組により、令和4年5月現在で本県内の導入実績は、小・中学校等で772校、率でいうと73.7%と急速に普及拡大しました。この間の御努力に敬意を表します。
そこで、今後大事になってくるのは質の向上であります。取りあえずやってみたという学校もあるでしょう。中には、あまりうまくいっていない学校もあれば、大きな成果を上げている学校もあるでしょう。それぞれの地域の特性を生かしつつ、コミュニティ・スクールの質の向上を全体としてどう図っていくかは、県教育委員会の役割です。今後、コミュニティ・スクールの質の向上に向けてどう取り組んでいくお考えか、教育長に伺います。

A.高田直芳 教育長

コミュニティ・スクールは、学校運営協議会を通じ、学校と保護者や地域住民がともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、一緒に協働しながら子供たちの豊かな成長を支える仕組みです。
県ではこれまで、市町村に対してその導入を積極的に働き掛けてきた結果、現時点で、県内の約9割の市町村でコミュニティ・スクールが導入されており、令和6年度末までには、県内すべての市町村で導入の見込みとなっております。
議員御指摘のとおり、今後、コミュニティ・スクールの質の向上を図っていくことが重要であり、そのためには、学校運営協議会を通じて、地域住民のより積極的な参画を得ながら具体的に協働する活動を推進していくことが必要と考えます。
そのため、県では、地域と学校との協働活動に関する研究を市町村に委嘱し、学校運営協議会の中で、地域づくりを通した子供の育成をテーマに議論し、児童生徒と地域住民が一体となって、環境美化活動や職場体験活動の充実が図られるなどの取組が行われています。
今後とも、市町村教育委員会や学校、地域住民を対象とした研修会やフォーラムの開催などを通じ、こうした好事例の情報を共有しながら、コミュニティ・スクール全体の質の向上が図れるよう積極的に取り組んでまいります。

※上記質問・答弁は速報版です。
※上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
※氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。

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