2024/9/14 7面
 経済活動と環境負荷の軽減を両立させるため、埼玉県は資源の有効活用や廃棄量の抑制を図るサーキュラーエコノミー(循環経済)を推進している。企業に対する相談支援や補助金制度の充実のほか、ペットボトルの分別回収イベントの実施など県民への普及啓発を展開。その効果が県内で広がりを見せている。

■ワンストップ支援

 埼玉県は、循環経済の理念に基づく新たなビジネスモデルの創出に向けた企業間の連携を進めている。昨年6月には、さいたま市中央区の県産業振興公社内にワンストップ支援拠点「サーキュラーエコノミー推進センター埼玉」を開設。中小企業診断士などのコーディネーターが企業の製品開発や事業に関してアドバイスするとともに、国や県の各種補助金を紹介する。

 こうした支援を活用し、県内で先進的なモデルケースが誕生している。県の補助金事業に採択された所沢市の株式会社ティービーエム(佐原邦宏代表取締役社長)は、食品工場から排出される「油泥」を基にバイオマス燃料を精製する「資源化装置」を開発。同社は製品販売へ、越谷市の食品工場に装置を導入して精製されたバイオマス燃料をボイラーや発電の燃料などに再利用する循環システムの確立をめざす。脱炭素の推進や廃棄時のコスト削減、作業員の労働環境の改善にもつながる好事例となっている。

 佐原代表取締役社長は「県から開発費の3分の2が補助され、装置開発を進めることができた。北海道に次いで食料品の製造品出荷額が多い埼玉県から、循環経済の全国モデルを作っていきたい」と話す。

■認知度上げるPR
 循環経済に対する県民の認知度を上げるため、県は地元サッカーJ1チームの「浦和レッズ」と連携。埼玉スタジアムでの毎試合前にペットボトルを本体・ラベル・キャップの三つに分別した回収を呼び掛けており、県民を含む来場者を巻き込んだ意識啓発を進めている。また、分別回収されたペットボトルを原料にしたオリジナルマグカップを選手が手渡すイベントを定期的に開催するなど、多くの来場者にアピールする機会を設けている。

 昨年は計10回にわたってスタジアムでの分別回収を実施。初めは回収したペットボトルのほとんどが三つに分別されていなかったが、最後の回収では分別率が71%まで上昇した。今年も分別回収を呼び掛けており、県担当者は「開催回数を重ねるごとに分別回収量が増えており、県民の関心が高まってきているのを実感する」と手応えを語る。


■公明、持続可能な社会へ推進
 サーキュラーエコノミーを巡っては、公明党県議団(蒲生徳明団長)の各議員が議会質問を通して訴えてきたほか、2022年12月に大野元裕知事へ予算要望を実施するなど、一貫して訴えてきた。蒲生団長は、「県民や企業の持続可能な社会に向けた活動がさらに進むよう、より一層支援していきたい」と語っていた。