生活困窮世帯・生活保護世帯の子供に対する学習支援の拡充について

Q.石渡 豊議員(公明)

私は、平成22年6月定例会において、生活保護家庭の子供の学習支援について質問いたしました。生活保護家庭で育った子供が大人になったとき、再び生活保護を受ける貧困の連鎖です。そんな貧困の連鎖は、経済的理由による教育格差に大きな原因があると言われています。
本県は、平成22年9月から生活保護受給者チャレンジ支援事業として学習支援を始められました。この成果は高校進学率に顕著に現れ、学習教室参加者の高校進学率を見ますと86.9%から98.3%となり、一般家庭と同様になりました。就職にとって、高校の卒業証書は重要です。求人側は高校卒を求め、中学卒に対して求人は極めて限られております。
この学習支援は、平成27年からは国の生活困窮者自立支援法の下、町村を預かる本県と県下40市での事業となり、裾野が広がりました。参加者数は、中学生1,667人、高校生434人となりました。上尾市の事業となった学習教室の施設を視察してまいりました。その頃からです。もう2年前からです。私は、小学生対象の教室の必要性を本当に考えました。これならば小学生も通えるんだと確信しました。
それでは、今回は、まず、高校生を対象とした学習教室についてお聞きします。
1点目は、教室の設置状況並びに教室参加者数はどのようになっておりますか。この3か年の状況をお答えください。
2点目は、教室の開設状況がどうも低調ではないかと思われます。その原因をどうお考えですか。
3点目、今後拡充、推進するには、どのように支援を図られますか。知事の御所見をお伺いいたします。
さて、東京都が子供の生活実態を調査しました。「生活困難層」と「困窮層」も定義いたしました。
まず、3つの項目を問います。1つ、「低所得ですか。」、2つ、「経済的な理由で公共料金や家賃が払えなかったことがありますか。」、3つ、「海水浴など一般的な子供が経るような体験がないですか。」、答えは、この3項目のうち、いずれか1つに当てはまると生活困難層、約20%。2つ以上に当てはまると困窮層になります。約6%です。
次に、この困窮層の小学5年生の子供に授業について問いました。「授業が分からない」「ほとんど分からない」「分からないことが多い」と答えた子供は、学年平均に比べて2倍を超えました。28.7%です。
ここで、学習内容を比較いたします。1年生、2年生は比較的単純な学習内容です。ところが、3年生、4年生となりますと学習内容への理解を求められますので、複雑化します。学力格差は、この3、4年生頃から生まれてくると考えられてもおります。
私たち公明党県議団は、2月1日、学習支援事業を小学4年生から実施している石巻市を訪れ、市から委託されたNPO法人TEDICを視察いたしました。TEDICの活動を御紹介申し上げます。
市内3か所の教室に23名の子供が通ってきています。ひきこもりで5名の方は来られないんですが、家庭訪問をします。学習支援員3名と大学生31名のスタッフが懸命に支援をしています。勉強のほか、子ども食堂など子供の居場所づくりをしています。関係機関との連携も良好です。評価も高く、平成29年度、「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」の内閣総理大臣表彰も受賞なされております。TEDIC代表の言葉が心に残りました。「中学生になる前、小学生からの支援が大事です。学校での授業が分からなくなれば、孤立感は増大します。不登校になるケースがとても多いのです。」
お聞きします。本県は、来年度から対象年齢を小学校3年生に引き下げ、6市町でモデル事業を始めるとされています。ジュニア・アスポートと名付けられてもおります。
1点目、支援対象を拡充するこの事業は、しかるべき期間はしっかり継続をして、事業を拡充するための検証をすべきと考えます。
2点目、是非とも県下の市町村へジュニア・アスポートを広めていくべきと考えます。知事の決意あふれる御所見をお伺い申し上げます。
 

A.上田清司 知事

まず、高校生教室の設置と教室参加者数の3か年の状況についてでございます。
子供たちが高校をきちんと卒業して、安定した仕事に就いてもらうことを目的に平成25年度から高校生対象の学習教室を実施しています。
この成果が国に認められ、生活困窮者自立支援法の中に学習支援事業が位置付けられました。
この法律の下で、平成27年度から対象者を生活困窮世帯の子供にまで拡大し、市部は市が、町村部は県が事業を実施することになりました。
お尋ねの高校生教室は平成27年度は県と28市、平成28年、29年度は県と31市で実施しており、9市が未実施になっております。
平成27年度から平成29年度の教室数の実績は29教室、34教室、43教室と徐々に拡大しております。
また、教室参加者数の実績は平成27年度が279人、平成28年度が434人、平成29年度が10月末現在で398人になっております。
次に、高校生教室の開設が低調な原因と今後の拡充・推進への支援についてでございます。
実施していない9市に理由を伺ったところ、職員体制が十分でないこと、更なる財政負担が生じるなどと言っておられます。
私は貧困の連鎖を断ち切り、未来への投資となる学習支援事業について全ての市で実施していただきたいと考えております。
そのため、未実施の市には会議や個別相談などでこの事業の重要性や県が蓄積した事業実施のノウハウなどを伝え、実施を引き続き働き掛けてまいります。
国に対して国庫補助率の引上げを引き続き要望して、こちらのほうからも応援をさせていただきたいと思います。
次に、小学生向けの学習支援事業の継続とその検証の実施及び市に広めていくことについてでございます。
平成28年の勤労者世帯の可処分所得が年額515万円であり、ピークであった平成9年の596万と比べて残念ながら約15%減少しております。
また、金融資産を持たない世帯の割合は昭和62年では3.3%でしたが、平成29年には31.2%と約3世帯に1世帯まで上がっております。
こうしたことから子供の学ぶ機会を奪い、貧困の固定化と連鎖につながることは絶対避けるべきだと思っております。
どんな人にもチャンスがある。そして何回もある。そういうことが大事だと思っております。
社会で活躍するチャンスをつかむには、より早い段階からの支援が必要だと考え、新たに小学生向けのモデル事業を6市町で始めることとしました。
モデル事業で学力だけではなく、社会でたくましく生きていくための基となる非認知能力の向上のための体験活動なども充実させたいと思っております。
この事業は数年間継続して、学力や非認知能力の向上などを検証していきます。
もとより、追加で小学生向けの学習支援事業を実施する市町があれば随時支援させていただきたいと思います。
教室に通っている子供たちの成長や変化の度合などの事業成果を発信し、この事業を全ての市にしっかり広めていきたいと考えております。
また、国に対して事業成果を基に学習支援事業の更なる充実や制度の見直しを働き掛けていきたいと考えております。
子供たちが家庭環境や経済状況によって社会で活躍できるチャンスが奪われることのないような埼玉をつくっていきたいと考えております。
 
 
上記質問・答弁は速報版です。
上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。

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